ふえっこ

里山楽校ふえっこ オンライン説明会を終えて。

こんにちわ。竹岡農園の竹岡です。
そろそろ梅の花も咲き始め、畑では春の作付けが始まりました。まだ朝の作業は7時半ごろからですが、今年はシェアハウスの人数も多く一気に仕事がはかどります。
さて、里山楽校の来年度からの方向性について説明会が行われました。
一区切りつきましたので、整理も兼ねて個人的に感じてきたことをブログに書いてみます。
主には、中山と楽校立ち上げのことですので、実際関係者でなければ想像できないことを多々あると思いますので、その点ご了承下さい。

オルタナティブスクール里山楽校ふえっこのオンライン説明会が先週の土曜日に開催されました。
開校してから保護者には一切の活動費を頂かず、ドネーションで運営してまいりました。ドネーションと言っても寄付者を募って、資金が集まってからやっているわけではありませんので、当然施設費や謝礼などかかるものは経費がかかり、未来の子どもたちへの投資と思って赤字で走ってきました。

施設などのハード面は農園が負担し、少なかったですが社会人のサポーターさんたちの謝礼などは里山ようちえんの運営母体であるNPO法人丹のたねの活動費積み立てから切り崩しながら、何とか1年で方向性や運営方法、体制など大枠が整ったところです。
ドネーション頂きました皆様、本当にありがとうございました。
ドネーション参加者向けの来年度の方向性のご報告については修了式が終わり次第、ドネーション頂いた方にご連絡いたします。

思えば昨年4月当初、中山がやりたいと言った「サドベリースクール」というものの様子を見守る形で里山楽校はスタートしました。
中心となり現場に入り、子どもたちと直に向き合う中山のやりたいようにやらせてみるという、いつもの僕のやり方で始めてみたのですが、結果は本当に厳しいものでした。

中山はそもそも教員現場に入った経験や、子どもと必死に向き合った経験もなかったので、まず自分の人生を総括することから始めなければならなかったのです。
4月までの事前準備に4ヵ月。

4ヵ月の間、農園の多岐に渡る事業の運営で僕の負担が大きいということで、見るに見かねた篠山の友人で信頼のおけるT氏に中山の開校準備を相談にのってもらっていましたが、なかなか聞いているようで聞いていない中山の態度に一進一退を繰り返し、開校直前の3月にT氏の方からこれ以上中山に付き合うことは出来ない、来てくれる子どもたちのことを本気で真剣に考えてほしいと見限られ、4月の開校直前になって僕の方で引き受けることになりました。

「自分がなぜ学校を始めたいと思ったのか」、「自分が来てくれる子どもたちとどんな風に過ごし、育ってほしいのか」、何度も何度も書かせてみたのですが、開校式当日まで何も明確なものを出せず、ついには僕の方から中山の人生のヒアリングをし、文章にまとめて資料を渡すという流れにまでなってしまいました。
ちなみに、開校式に出られた方はご存じですが、その作成し彼女が使うと約束した原稿も、直前で彼女の思いついたことを話すという結果になり、無駄になってしまったのですが(笑)

中山はやりたいことがあるにはあったのでしょうが、実際に「自由にやっていい、責任はこちらで取る」、では何一つ自分で行動できない状態だったのです。
それでも、彼女にとってはせっかくのチャンスですし、実際子どもたちと過ごす中で少しでも責任感を持ち、自分を認め変革して進化していく姿を周りに見せていってくれたら、きっと保護者の方も応援してくれる、そう思っていました。

中山が言うにはサドベリースクールというのは、子どもたちが「自由」に遊び、感性を育み個性を伸ばすことで子どもたちがありのままで生きられる環境だと言います。
それは理屈では良いですが、教室という箱の中と自然豊かな里山では話が違います。
教室と言う狭い箱の中で遊び道具などコンテンツを散りばめて、ある程度の選択肢の中から自由に自分のやりたいことを突き詰める、これは可能です。
しかし、自然しかないしかもフィールドはどこまでも行けるというある種制限の無い自然環境下で子どもの意思決定だけで大人が口を出さず、1日を過ごすのは非常に危険です。
まぁ、当然なのですが。これが理解できていない彼女でした。

あくまで、リーダーとなる中山と子どもたちの信頼関係、ひとり一人の生徒の個性・感性を深く理解し、そのお子さんが2,3手先までどう動くか想像できるくらいになって制限の無い野山に放り出せるというもの。
それは非常に現場責任を担うリーダー自身にものすごい体感が必要です。人間ですので、ずっとは緊張してられませんし、かと言ってのんびり子どもの好奇心や動きが見えなくなるくらい気を抜いた瞬間いろいろなことが起こります。

中山は子どもたちと信頼関係をどう育むかということが全く頭になく、自分が里山に連れていく上で何をどのくらい気を付けていけばいいか、その体感をどう鍛えていくかの危機感もありませんでした。
しかも、自由という言葉に執着しすぎて、子どもたちが何かを拒んだら、拒んだ気持ちをただ受け入れることが重要だと考えていたようです。

何を嫌がっているのか、何を拒んでいるのかしっかりやり取りすることなく、理解することなく、「嫌ならやらなくていい」となってしまいます。
これは本当に中山の生い立ちの深いところに原因があったのですが、1学期では我々サポーター陣もそこまでたどり着けませんでした。

そうした状態の中山を支えるべく、一般のサポーター5名の方々には大変ご苦労をおかけしました。
子どもたちとどうしたいのか、何を進めたいのか、どんな楽校を作りたいのか、全くないものですから非常にサポートは難しかったことだろうと思います。
1学期の時点で相当難しくなっていたのは分かってはいたのですが、具体的な方針を出せるまではサポーターさんたちを不安にさせますし、何より現場で一緒にもがいてくださっているのですから、原因も特定しきれず中山の信頼を落とすようなことは共有できません。

1つずつ、中山の言動からトライさせ、実際に結果を見ては、本人の認識を聞く、これを続けたのが1学期です。

そして、夏休みに入ったころようやく彼女が本当は何をしたいのか、こちらもつかめてきました。

彼女はただ、来てくれている子どもたちと一緒に過ごし、遊び、自分の止まってしまった子供時代の時間を取り戻したいだけだったのです。
生い立ちの部分が詳細に本人の口から話せないので、部分的な本人の話と状態から推測し周りのサポーターや関わる方と彼女の理解を深めていきました。

中山自身がもっと周りの人と深く繋がり、一緒に遊び、やりたいことを見つけ、やりたいことを形にすることを信頼関係の中でやっていきたかったのです。
そうした成長が出来るのが、彼女のやりたい「サドベリースクール」ということなんだと理解しました。

しかし、実際日々の目の前の課題は課題としてあり、今の彼女では個性を伸ばすサドベリースクールどころか、彼女の話さえも十分に聞けない、信頼関係と対話の難しいクラスが1学期を通して出来上がっていきます。

子どもたちの意思決定を尊重するのではなく、単に会話の中の屁理屈を通していると、自由という厳しさや怖さの認識ではなく、自由を与えられないこと=わがままを通せずに拗ねる人間を作ってしまうことになります。
言われるまでもありませんが、この世界の人間は程度の差こそあれ全員自由ではありません。肉体という制限がありますし、空気ひとつなくて水がなくても活動が困難です。
自由でないから、自由意志を持つことに価値があるのです。
自分のやりたいと思ったことを制限の多いこの世界で、どうやったら形に出来るのか、どうやって周りの人間と協力して作っていくのか、前を向いていくのか、その困難を通して人は大切なことに気づき、成長するのではないでしょうか。
そうした精神的葛藤を伴うことこそが、自由を目指す人間の活動のだいご味であり、自分のやりたいことに挑戦するモチベーションを育てていくことに繋がります。
※ちなみに余談になりますが、制限とは別の側面で言うと顕在意識における「安心感」ともいえると思います。人は自由の反対側に制限という自分の見知った世界、常識、ルールなどを設け、安心する生き物でもあります。でもそこが退屈になったり、息苦しくなったり、変化を求めたりして、現状よりも自由な世界に飛び出すのです。つまり、安心感があってこそ自由へと飛び立てる。安心感を作っていくことが自由な楽校を形成していく上での一番大事なことだと思います。

そんなことを考えながら、中山と子どもたちの対話を促すべく、サポーター陣のお一人で中学校教諭を長年されてこられた清水さんに彼女の本格的な指導係をお願いしました。
毎週、毎週、中山の理想と実際の子どもたちとのギャップを埋める作業、中山が今出来ることの整理、来週最低何をやらなければならないかの方針出し、自由に遊ぶ時間は自由、しっかりまとまって周りと歩調を合わせる時間はけじめをつけて自分の役割を自覚したり自信をつける、をやって頂きました。
時には深夜になるまで一緒に話したこともあります。

その積み重ねを経て、この3月ようやく中山と決めたドネーションで最低1年は楽校運営を実施する、が完了します。
3月17日の閉校式では中山と子どもたちで考えた1年の締めくくりの式を保護者の方々と我々関わった大人たちに見せてくれます。

説明会ではご案内しましたが、この楽校は1年で開校し閉校することになりました。
毎年、新しい楽校が生まれ続けるのです。
来年は今年の反省を踏まえ、4月開校する前に10歳以上の子どもたちと中山に加え2人の20代のリーダーたちで里山研修し、年間計画を作ります。

どんな楽校にしたいのか、どんな活動をしていくのか、10歳以上で考え実施する。
10歳未満のお子さんたちは里山の自然いっぱいの中で、周りのリーダーや友達としっかり人間関係を築きながら、思いっきり身体を動かして、楽しいことたくさんやってください。
子どもたちの意思を最大限尊重するリーダーチームを作っていきます。

だけど、くれぐれも「ありのままでいい」という言葉をただの放置、や周りの意思を尊重しない状態=自分勝手の状態と勘違いしないでほしい。

この1年、中山と向き合う中で自由とは何なのか、子どもとはどういう存在なのか、どんな可能性を持っているのか、人間の可能性と危うさ、人間性とは、など農業をやっているだけでは考えることもなかったことをたくさんと考えさせてもらえました。

僕にとってはこれからの人生に大きな糧を得た1年だったと思います。
精神的にも、肉体的も限界を超えていましたが(笑)

来年度、NPOの方では代表職を降ります。
次の世代にバトンタッチをするべく、新たな体制で運営体制も変わっていきます。
僕の方は、場所のオーナーという形でかかわっていこうと思います。
組織の人間は皆僕の仲間たちであり、自分が集めたメンバーですので、組織の御用聞きとして、もう少しやることはありますが、大きな一歩を来年は踏み出すことになります。

「普通の百姓は野菜を育てる、優秀な百姓は土を育てる、しかしさらに優秀な百姓は人を育てる」という先輩農家の言葉を胸に、人がより精神性の高いレベルで自己決定し、チャレンジし、育つ場所を目指していきたいと思います。

中山との個人的なこともたくさん書きましたが、変わらずこれからも見守って頂けたら幸いです。
今後ともふえっこ王国をよろしくお願い致します。

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