就農というと、独立か雇用就農かどちらかしかないように考えている方が多いですが、雇用されながら自分でも仕事をするという選択肢が一番理想のようにも思います。
急に何の話かと思われるようですが、ちょうど新規就農について話が出たので、色々と思うところを書いてみようと思います。
今日の動画は、最近よく動画を撮影してくれるインターンのきみちゃんのインタビュー動画。
農園の日常や、行っている事業、働いている従業員について色々と会話を膨らませてくれています。
椴木さんの場合は、最初畑の農作業のアルバイトで雇用し、正社員となり、今では畑のお手伝いはたまにしてくれていますが、基本的に農家民宿、里山レストランのサービス業の従事者となりました。
農業従事して2年ほどして、体力的に畑作業をずっとが厳しいのと子どもが生まれたタイミングで、農作業での働き方が難しくなったため会社の方で雇用の内容を変更したのです。
このように、雇用就農は全部自分で決められないけど、人と仕事しているので足りないところは補ってカバーしあって仕事のやり方を最適にしやすいところがあります。
農業は、田舎でのんびり作業して楽しいというイメージですが、実際は天候に左右される非常にシビアな仕事。
先日も猪の子どもが村の中に入ってきて、サツマイモをどんどん掘り起こし壊滅させてしまいました。
天候や、獣害だけでなく、安心な無農薬栽培でいこうと思うと害虫との闘いもあります。
暑い日も、寒い日も畑での作業は身体的にもメンタル的にも非常に強くないと継続できません。
さらに、貨幣社会で生き残っていくのは非常に難しい産業です。
稼いでいくには拡大、大規模化をしていくか、我々のように他の業種とのコラボレーションを行い六次化していくことで経済的に安定を築いていかないと生活がままなりません。
そういう意味で、未経験者がいきなり独立就農を考えるのは基本的に無謀だと考えています。
雇用就農だと自分の好きに出来ないとか、こだわりたいとかいろいろと思いは理解できるのですが、独立してやっていくということは作物を育てるという「以外」の力が非常に求められます。
例えば、作物を育てるとお客様にどう販売するか、どこでお客様を見つけるか、どんな価格帯で販売するかから、作物が何らかのトラブルでお客様に出せなくなったらどうするか、見込みの売り上げが下がったときに経営的バックアップをどう考えるか、設備投資は何をして何をしないかなど、ありとあらゆる情報を処理して、自分のやりたいことに沿わせていかなければなりません。
独立すれば、作物の栽培を下支えする経営課題から、地域のお付き合いなどありとあらゆることに対応して行かなければなりません。当然、現場の畑や出荷などに入る時間も制限されてきます。
一番の理想の新規就農の仕方が、自分が今後一生お付き合いしていける師匠や仲間を見つけて、そこで雇用就農していくことです。
この人と一生関わっていきたいなとか、この仲間と長く繋がっていたいと思える人たちの近くで就農し、仲間や先輩、師匠に逐一相談しながら農作業のこと、田舎のこと、経営のこと等を教えてもらい、タイミングが来たら独立という流れが一番良いと思います。
独立後も、互いに補い合える関係が継続しますし、独立初期段階での課題に対しても困ったときはお互い様で助け合える人間関係を持っているというのは田舎で生きていく上で一番の強みだと思います。
技術や、経営手法、やり方ばかりを重視しがちな傾向にありますが、本当に大切なものは人間関係以外ありえません。
人間関係ほど、仕事をしていく上で安定させてくれるものはありませんし、発展していく上でも頼りになるものはありません。
意外と誰でも持てる、誰もが持ってるものが一番の強みなんです。
無いものばかりに目を向けるのではなく、自分にあるものを大切にして、それを武器に磨いていくことが独立する一番の近道であり、長く続く方法だと思います。